ネパールに関する書籍紹介
今まで僕(天野っち)が読んできた本の中で、
ネパールに関連する書籍を紹介します。
関心領域が国際協力・言語なので
それらに関する書物が多いです。
すべて僕の意見なので
あくまでも参考までに。
このブログはターゲットの中に、「学生」も入っています。
その学生へのメッセージとして、沢山の本に出会ってほしいとの思いも込めて
このページをヘッダーの項目にしています。
(自分にももっと読書しろよ、との思いもあります。)
学生よ、本を読もう。
ネパール文化・歴史等についての書籍
『ネパールに生きる』 八木澤高明著
読みやすさ:★★★★★
ネパールに興味を持った人で、
その歴史を知りたいと思った人は真っ先に読んでほしい一冊。
文章が読みやすい。
カメラマンである筆者が記録した90年代のネパールが写真とともに
物語調で書かれている。
マオイスト(毛沢東主義)の活動が盛んだった当時に
生きる若いネパール人の人生が描かれている。
また、最後には1997年に起きた東電OL殺害事件で
犯人とされたネパール人のゴビタさんについて書かれている。
(2004年に出版された本書では収監されていたゴビタさんは2012年に無罪が確定している。)
本書の表紙の若く美人な女性が目を惹くが、
彼女が歩んだ人生は日本人のそれとは
到底、比較できない程に翻弄されたものであった。
私たちには想像し得ない人生を歩んだ彼女を知るためにも本書を一読してほしい。
開発援助か社会運動か―現場から問い直すNGOの存在意義 定松栄一著
読みやすさ:★★★★☆
元シャプラニール・ネパール駐在員である筆者が
カマイヤと呼ばれるネパールの「奴隷」である人々に対して支援をしようと
決めた時から、筆者が退職するまでを詳細に書いた一冊。
筆者のあとがきにも書かれているが、
読者が追体験できるように筆者の時々の感情とともに
「したこと」と加えて「しなかったこと」にも触れられており、
NGO駐在員として活動する筆者の苦悩が描かれている。
現在、日本を代表するNGOともなったシャプラニールでも、
一つのプロジェクトを決定し正常に走らせる迄に、
これほどの時間と人間的感情が入り交じるものであるということが
鮮明にイメージとして伝わってくる。
ネパール 村人の暮らしと国際協力 清沢洋著
読みやすさ:★★★★☆
NGOネパールカルナリ協会の理事長を務める筆者の体験談とともに
意見が述べられている。
一般の日本人が足を踏み込めないような地域に人脈を駆使して、
入り込み、現地の状況と彼らから直接的に話しを聞いているという点で、
非常に興味深い。
文体も読みやすく、数時間で読めてしまう。
内容はネパールの農村で活躍するNGOや障害者など。
特にネパールにおいて障害者がどのように政府からサポートを受け、
所属コミュニティでどう助け合っているかということが詳細と具体的に書かれている。
地名などネパールのことを知らないと少しイメージがし辛い部分はある。
筆者は国際協力に関心のある人向けに執筆したようで、
その分野関連の章であり対象の人、特に学生にオススメしたい本である。
筆者の意見を一意見として見て、自らはどう感じ考えるかの土台にしてほしいと思う。
『ネパールに学校をつくる: 協力隊OBの教育支援35年』
酒井治孝著
読みやすさ:★★★☆☆
協力隊OBである筆者がネパールの村に学校を作るまでの
経緯や資金調達方法、建設してからの工夫が細かに記録されている。
現在、学校数が不足しているネパールで
学校建設に携わる人であれば大いに参考になる一冊。
『ネパールを知るための60章』 (社)日本ネパール協会編
読みやすさ:★★★☆☆
明石書店のエリア・スタディシリーズである。
手早く広く、その国が抱える現状を知るには一番の書物である。
ネパールに滞在する日本人の多くが関係を持つ
「トリブバン大学」についての章もあり非常に面白く興深い。
内容は「生活」、「社会変化」、「マイノリティ」、「健康」、「メディア」と
幅広くカバーしている。
『流動するネパール –地域社会の変動−』 石井溥編著
読みやすさ:★★☆☆☆
ネパールの政治・経済・社会・文化を扱う第一部と、
フィールドワーク調査に基づいたネパール地域社会の変化を扱う第二部で
構成されている。
非常に学説的で使われている用語もネパールに通ずる者しか分かり得ない言葉もある。
ネパールについて、
歴史を遡り現在の形に至るまでの経緯を知りたいと願う人には
非常に優れた学術書である。
『ネパール 暮らしがわかるアジア読本』 石井溥著
読みやすさ:★★☆☆☆
学術書。
ネパールの歴史、社会や特にネパールがもつ『多様性』に焦点を当てた書である。
インドと中国という超巨大国家に囲まれたネパールが
そのアイデンティをどう模索し、現在の姿まで成長していったのかが理解できる。
上記の『流動するネパール』よりも馴染みのある言葉や内容であり、
理解は比較的しやすい。
現在ネパールに関わりをもつ日本人はNGOやNPOまたは国際協力関係者が多い
と予測されるが、
本書にある鹿野勝彦が執筆した「NGOとはなんだろうか」は一読したいコラムである。
(否、同じく国際協力を目指す私が心に留めておきたいと思っているだけなのかもしれない。)
『体制転換期 ネパールにおける「包摂」の諸相』名和克郎編
読みやすさ:★★☆☆☆
包摂:一つの事柄をより大きな範囲の事柄の中にとりこむこと。(大辞林より)
ネパールにおける包摂の概念について各章テーマに分かれ論じられている。
初版2017年3月と非常に新しく、現在にも通ずる知見、言説である。
内容は難解であるかもしれないが、第9章のストリート・チルドレンの章では高田洋平さんが実際に彼らの場所に入り込み調査をした結果が反映されており、読みやすい章であった。
最近のネパール政治状況を知るにはとても良い一冊。